明るいキッチン、女性がマイク代わりにフライ返しを手に歌う1コマ・・・。シンガー・ソングライターTOMOOさんの代表曲「Ginger」、そのミュージックビデオ(MV)のサムネイルです。俳優さん?と思うほどの美貌に目が留まり、再生してみると、ピアノを弾いて歌う彼女の声と姿にシビれる。これが、TOMOOさんの世界へと入り込んだきっかけです。
メディアでも、バンド「back number」の清水依与吏(しみず・いより)さんや、キタニタツヤさんらアーティストの方々がよくTOMOOさんの曲を推しています。Vaundyさんは「Ginger」について、「耳触りが良く、書きたいことを書くと文字が多くなってメロディーの質が落ちがちだが、メロディーの粒数が多いのに書きたいことを両立させていて素晴らしい」と絶賛していました。
一聴すると、ラフな印象を受けるかもしれない曲ですが、全てに妥協がなく、間奏にもこだわりを感じます。彼女の低音ボイスによって安心やリラックスが増していく。その脱力感がとってもおしゃれなんです。
11月12日に新アルバム「DEAR MYSTERIES」をリリースするTOMOOTOMOOさんが紡ぐ歌詞はリアリティーがあって、きめ細やかで、曲世界を流れる風が薫ってくるようです。インタビューを拝見すると、心の機微にとても敏感で、物事を深く突き詰めて考え抜く方だなと感じます。
ライブでは真っすぐ前を見つめて、はつらつとしてパフォーマンスをする。ところが、ラジオやインタビューでは、話した直後に反省を口にするほど謙虚です。「自分のコンプレックスを通して世界を見る」というお話をされていました。幼い頃から、他人とすぐに打ち解けることが得意ではなく、1人で考える時間が多かったそうで、思考の末に行き着いた彼女なりの哲学は、とてもユニークです。例えば、「丸」をテーマにした楽曲「Super Ball」には、こんな歌詞がつづられます。「真四角になれる素質なんて 誰も持っていないのに」「”槍(やり)出せ 角出せ“はいらない 丸いままつらぬいて」
歌詞全体を眺めていると、角度によって見え方が変化するアート的な楽しさがあります。歌には、自身を「丸」だと語る優しい人柄で、聴き手を包み込む温かさもあります。彼女いわく、とがっていることが強さの象徴とされがちで、四角形や三角形には安定感があるけれど、自由に動ける丸には、いろんな可能性と強さがある。丸いことこそが強さだということです。
日常に聴くだけで、自分がおしゃれだと錯覚させてくれる彼女の楽曲たち。深掘りするとTOMOOさんの哲学が作用して、新しい視点が生まれる。そしてMVを見ると、TOMOOさんのかわいさに、視力が上がります(笑)。良いことしかありません!
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 40からの転載】
やまざき・あみ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。タレント・モデル。1st写真集「Cantabile」(ワニブックス)の他、デジタル写真集も発売中。YouTube番組「うるおうリコメンド」(略称うるりこ。共同通信社制作)出演。