
トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』と併せて2部作として製作され、「デッドレコニング」から続く物語が展開。前作のラストで世界の命運を握る鍵を手にしたイーサン・ハントが、その鍵によって導かれていく運命が描かれる。前作に続いてCIAの特殊工作員ドガを演じたグレッグ・ターザン・デイビスに話を聞いた。
グレッグ・ターザン・デイビス (C)エンタメOVO −私は昨日この映画を見ましたが、とても興奮して疲れを覚えたほどでした。自分はやる立場だったので、もっと疲れましたよ(笑)。世界中の観客を興奮させるのがこちらの一番の目的なので、興奮していただけてよかったです。ありがとうございます。
−演じたドガですが、前作とは立場が変わりました。その変化についてはどう思いましたか。ドガは、今回イーサン・ハントとも行動を共にすることになるのですが、前作の時にすでにそういう気配を感じさせていたと思います。なぜかというと、彼は自分に与えられたイーサン追跡の任務に対して疑問を抱いていた。これは果たして正しいことなのかとずっと考えていた。それで、やっぱりこれは違う。世界を救うためには自分はイーサンの側にも回るべきだという選択をするわけです。そうした心境の変化は、演じていて非常に楽しかったですし、演じる醍醐味(だいごみ)の一つでした。
−そのチームは、イーサンを中心に、さまざまな人種や年齢、性別の人がいる混合チームで、多様性の時代を象徴するような感じがしました。あくまで娯楽作品なので、そうした社会性のあるメッセージを伝えることはあまり考えていなかったと思います。それよりも、世界がもう終わるかもしれないという時に、人種や性別は関係なく、とにかく身近にいて戦う気持ちがある人たちと力を合わせて、何とか世界が終わらないようにしようということがあったと思います。自分が演じたドガに関して言えば、彼はCIAの中でもより抜きの特殊工作員で自分の仕事にとても誇りを持っています。そうした組織では、指揮系統は絶対で命令に背くことはあり得ないのに、彼はイーサンに協力する。それは、どちらを取るかといえば、やっぱり世界の終わりを止めるのが最大の目的だというところにたどり着いたからだと思います。
−『トップガン マーヴェリック』(22)、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』(23)、そして今回の映画と3作続けてトム・クルーズと共演していますが、その印象と、あなたの父親ぐらいの年齢の彼のアクションについてどう思いますか。トムとの旅は2018年ぐらいから始まったんですけど、改めて振り返ってみても、あり得ないことの連続でクレイジーとしか言いようがないです(笑)。彼と出会ったおかげでパイロットの免許を取り、戦闘機に乗り、水中でサメに食べられそうになり、目の前で北極グマと遭遇し…。世界で最も成功し長く続いているブロックバスターといわれる映画のシリーズに参加して、自分でもよく分からないぐらい、すごい体験をさせてもらったと思います。
今のトムを見ていると希望をもらえます。自分も頑張ってこのまま運動を続けて、食事に気を付けて、いろいろと彼の生活習慣を見習っていけば、自分が今の彼ぐらいの年になった時にも、飛行機の翼から逆さにぶら下がったりすることもできるかもしれないと。できれば普通に機内に座って機内食とかをエンジョイしたいタイプなので、あんなことはやりたくはないのですが(笑)、できるかもしれないという可能性を示してくれるのは素晴らしいことだと思います。
−クリストファー・マッカリー監督の印象は?今や彼は自分のおじさんのような存在なので「マッカリーおじさん」みたいな呼び方をしていますが、自分にとっては先生ですね。彼は演出だけではなくて指導力もとても優れています。自分が恵まれていると思うのは、トム・クルーズという最高のトップスターとクリストファー・マッカリーという最高の監督に付いて回ることができて、彼らの映画作りの様子を間近でたっぷりと見させてもらい、吸収させてもらえたことです。本当にかけがえのない体験で財産になりました。
−では、トムがお父さんでマッカリー監督がおじさんなんですね(笑)。もう一生、2人に付いていこうと思っています。
−この「ミッション:インポッシブル」の2作は、あなたにとってどんなものになりましたか。子どもの頃にスパイごっこをやっていたことを考えると、それが現実になって夢がかなったという思いはあります。けれども、自分の俳優としてのキャリアはまだ始まったばかりなので、最初からこんなにすごい人たちと一緒に、恵まれたスタートが切れた自分はかけがえのない学びの場を与えてもらったと思います。もちろん生身でスタントをやったり、成功してきた映画シリーズの一部を背負うという責任感も改めて認識させられましたが、最もシンプルに学んだことは、俳優は単に演じるだけではなくて、ストーリーテラーでなければならないということでした。本来なら20年、30年とキャリアを積み重ねて学ぶべきことを、トムやマッカリー監督と3本続けて組めたおかげで身につけることができました。自分にとってはとても大きな財産になりました。
−今回演じるに当たって気を付けたことや心掛けたことはありましたか。正しいことをしたいという正義感、そうしたドガのハートの部分を感情豊かに演じることに最も気を付けました。前作に比べると、そうした心情を前面に出していったところがあります。彼は常に自分の身の回りで起きていることに対して冷静に疑問を抱いています。今回は彼の立場が変わってイーサンに味方したわけですが、それでも「何であなたがそこまでやらなければならないんだ」とか「別にあなたがやらなくてもいいじゃないか」と疑問視しているのはドガだけだと思うんです。そうした面でも、微妙なバランス感覚みたいなものを表現することを心掛けました。
−ドガがイーサンを見る時の目線や表情の変化にそれは表れていたと思います。気付いていただいてありがとうございます。
−最後に、日本の観客や読者に向けて一言お願いします。このシリーズを、ずっと手掛けてきたマッカリー監督とトムにとっては、前作をしのぐ映画にすることを目指して撮ってきたと思いますし、その通りになったと思います。とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした。IMAX仕様で作ったので、IMAXの大きなスクリーンで存分に楽しんでほしいと思います。もちろんスタントも含めて、皆がすごく頑張って作ったこの映画を心の底から楽しんでほしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)
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