
少子化が止まりません。2024年の日本人出生数は70万人割れが確実です。ここ数年は前年比5%以上の下落率が続いており、少子化に拍車がかかっています。
少子化の背景には、婚姻数の減少があります。近年、さまざまな研究機関や団体などで、若者が非婚・晩婚となる理由を明らかにする調査・分析が実施されています。それらによれば、伸び悩む実質賃金を背景に家族を養う経済的な負担の大きさなどから、若い世代の婚姻意欲が低下していると指摘する分析結果が多く見られます。また、独身者の多い東京などに若者が集中し過ぎていることも、日本全体で婚姻数が減る一因との指摘もあります。
このような分析や考察を否定するつもりはありませんが、近年の結婚動向を精緻に分析してみると、通説だけでは説明し切れない、異なる要因が見えてきます。結婚している人の割合を示す指標として、特定の年齢時点での有配偶者の割合である「有配偶率」を見てみましょう。
35歳男性の有配偶率について、00年から20年までの推移を都道府県別に見ると、いずれの年も東京都が最も低い状況にあります。しかし、東京都の場合、05年以降有配偶率は横ばいで、低下は見られません。逆にその他の地域、特に地方部では有配偶率の低下が止まらず、東京都との差異が小さくなりつつあります。有配偶率で見る限り、地方が東京化しているのです。非婚・晩婚は、若い世代の婚姻意欲の低下と東京一極集中ばかりが理由ではなく、地方こそがその震源地となっていることを見逃すべきではありません。
では、今なぜ地方で有配偶率が急落しているのでしょうか。筆者が00年以降の都道府県別データを分析して明らかとなった地方における有配偶率低下の理由は、次の2点です。
一つ目は、地域ごとの男女人口バランスの悪化です。製造業を主力産業とするような地域を中心に、若年女性の流出を食い止めることができず、女性に対して男性人口が多い県があります。こうした地域で、男性がパートナーとなる女性を見つけづらい状況が生じています。
地方の有配偶率急落の理由の二つ目は、地方で進む核家族化です。東京など大都市では、以前から核家族世帯中心の社会でしたが、地方では、結婚した人が親世代と暮らす多世代同居の伝統的な家族構成が一般的な地域が少なくありませんでした。ところが近年は、地方でも核家族化が急速に広がっています。伝統的な家族形態から核家族中心の社会への変化が、親が子にお見合い相手を紹介したり、結婚を促したりするなどといった、子の結婚に対する親の働きかけを弱め、それが地方の急速な有配偶率低下を招いていると考えられます。また、核家族化の進展により、子世代が自ら住宅を取得しなければならなくなることも結婚へのハードルとなっているのかもしれません。
近ごろは、親や親せき、ご近所さんが「結婚はまだ?」、「彼女はできた?」などというお節介(せっかい)をはばかる風潮が見られます。子の自主性やプライバシーを尊重することは大切ですが、その反作用として、結婚しない若者が増えている可能性は大きいとみられます。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.16からの転載】